第2章  地球と我が国の環境を巡る動向

【 何故、生物種の多様性が必要なのか 】

1)生物界はガラスでできたネットと言われています。

2)生物界は多様な種によって壊れやすいそのネットを支え、クッションとなり自然の猛威や特定種の異常発生等、生物が滅びる脅威を防いできたと言われています。

3)それが種の減少によりネットの目が粗くなってくるとネットがもろくなり、例えばある種の病原菌の異常発生を食い止めることができなくなる可能性がでてきます。

4)そうなると人類をはじめ生物の多量死滅等の脅威が増してくることとなります。


  生物の種の誕生には、何億年もの時間がかかっています。その時間に比べると、種の絶滅は、人間の手でほんの一瞬の時間で起こります。今まで以上に、人類生存基盤の一つである生物の多様性を確保する努力が世界的に求められます。(種の減少の関連URL 山形大学http://www.id. yamagata-u.ac.jp/EPC/13monndai/17syu/ syu.html)

8 大気の環境問題

(1)過去の大気の環境問題

 我が国では、昭和30年代後半から40年代(1960年〜1975年)の高度経済成長期に、四日市市や川崎市等の工業集積地域をはじめとして、化石燃料の燃焼に伴って発生する二酸化硫黄や二酸化窒素等による大気汚染が大きな社会問題になりました。
  これらの公害が起きた原因は、企業が生産面のみを重視し、排出ガスや排出水の環境に与える影響を考慮しなかったことなどによります。

当時の四日市の市街
四日市市
環境学習センターHP
http://www.city.yokkaichi.mie.jp/gakusyu/

  これらの被害を契機として、昭和40年代後半には、公害防止に関する様々な法律が制定され、環境庁(現環境省)も設置されました。その結果 、事業者、国民等の環境に対する意識も高まり、著しい健康被害を伴う公害問題は、おさまってきました。

(2)現在の大気等の環境問題

 高度経済成長期を経て、私たちの国は、世界中でも有数の経済力を持つに至りました。それと同時に、多くの資源、物質を使い、より多く、多様な商品を生み出しています。
  現在の公害問題は、@酸性雨A光化学オキシダントB大都市への負荷の集積C多様な有害物質による問題D有害廃棄物の越境移動等があります。かつての公害問題と比べると国や地域を越えた、広範囲に影響が及ぶこと、原因が複雑で解明に長い時間がかかること、影響が判別 しにくく因果関係がはっきりしないことなどがあげられます。

9 水の環境問題

 飲用や調理に用いられる水と、私たちの健康・生活の関係は密接で、一旦水が汚染されると早急な回復は難しく、大きな影響があります。
  全国の水質測定結果をみてみましょう。

(1)水質汚濁の環境基準と汚染状況

 人の健康を保護し、生活環境を保全するうえで維持することが望ましいものとして、環境基本法により水質汚濁に係る環境基準が定められています。

1)人の健康の保護に関する環境基準と汚染状況

 当該基準は、有害化学物質26項目について、全ての公共用水域を対象として、直ちに達成維持されるよう努めるものとして定められています。全国的に基準達成率は良好です。
  ただし、平成5年度に環境基準が強化された鉛と砒素、最近リストアップされた硝酸性窒素、亜硝酸性窒素、フッ素、ホウ素等は超過地点がでています。
  また、地下水は河川などに比べ水循環が遅く、土壌汚染物が浸透するのでより大きな問題となります。有害VOC(揮発性有機化合物)と硝酸性・亜硝酸性窒素による地下水の汚染が深刻となっています。有害VOCは工場などで使用されたものが不適切な廃棄などで土壌に浸透し地下水に移行して起こります。
  全国の観測によると硝酸性・亜硝酸性窒素の基準値(10mg/L)オーバーの井戸数は毎年5〜6%で、他項目に比べ著しく高くなっています。家畜排泄物の不適正処理や、生活排水対策の未整備、過剰な施肥などが原因ですが、硝酸性・亜硝酸性窒素を多量 に摂取すると、メトヘモグロビン血症(呼吸困難)を起こす危険性があります。
  宮崎県でも、用水のほとんどを地下水でまかなう都城市について調査研究が行われています。 (http://www.env.go.jp/water/chikasui/no3_ taisaku/index.html)

2)生活環境の保全に関する環境基準と汚染状況

当該基準は、水域(河川・湖沼・海域)ごとに利用目的等に応じて水域類型の指定が行われ,達成期間を示して、その達成、維持を図るものとされています。水質の汚れの指標としてBOD(河川)、COD(海域)等が測定されており、全国的にはBOD・CODの達成率は約80%となっています。特に湖沼や閉鎖性水域(内湾・内海)での汚染改善が進まない問題があります。宮崎県では、BOD及びCOD共に100%の達成率となっております。(水の環境問題の詳説ファイル https://eco.pref.miyazaki.lg.jp/gakusyu/chikyu/4/index.html)

(2)水をきれいに保つには

 河川の有機物汚染は、家庭排水により大きく影響されます。排水を浄化して流すために下水道、合併処理浄化槽等の整備が必要です。
  台所からでる廃油・食品残滓などのBOD負荷は極めて高く、排水としてできるだけ流さない工夫が大切です(下水道の場合も処理場での負担が大きくなります)。
  全国でも水のきれいな県である宮崎の水質を保つには、生活排水の環境負荷を低減し、同時に水辺に棲む生物を守り生態系を破壊しない日常の心がけが重要です。(合併処理浄化槽の説明 日本環境整備教育センターHP URL:http://www.jeces.or.jp/)

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10 有害な化学物質による汚染

 人工的につくった化学物質(合成化学物質)は、日本国内で5万種類以上が使われており、わたしたちの生活を便利にしています。しかし、これらの物質の中には人の健康や生活環境に悪い影響を与えるものもあります。

(1)生体や環境に有害な化学物質の現状

1)蓄積性合成化学物質

 発ガン性など毒性が高く蓄積性も高いダイオキシン類には3タイプあります。PCBの中で毒性の強い一群をコプラナーPCBといい、日本人のダイオキシン類汚染の1/3〜1/2を占めています。あとの2つはダイベンゾダイオキシンとダイベンゾフランで、ごみ焼却などでできる非意図的(造りたくないのにできる)生成物です。

巻貝の一種イボニシでは、船底塗料などに使用されてきた有機スズ化合物(トリプチルスズとトリフェニルスズ)がごく低温度で作用して雌に雄の生殖器(ペニスと輸精管)が形成されるインポセックスが起きることが明らかになりました。
撮影:大東正巳

 

 同じく蓄積性有害化学物質として、PCB、有機塩素系殺虫剤(DDTなど)、有機スズ化合物などもあり、体の調節機能をつかさどる体内ホルモンに似た作用を行うことから環境ホルモンと言われています。これらの汚染は、南極や北極を含む地球全体に広がっています。難分解性ですので、製造・使用を禁止した今も汚染が続いているのです(蓄積性の高い有害化学物質の詳説ファイルhttp://eco.pref.miyazaki. lg.jp/gakusyu/chikyu/5/index.html)   動物実験結果 から1日摂取許容量(摂取しても安全な1日最大量)が決められており、人の平均的な摂取量 は許容量を超えることは余りありませんが、複数の有害化学物質をいっしょに摂取する複合汚染での許容量 は科学的には定められず、複合汚染による影響ははっきりしていません。「化学物質審査規制法(化審法)」で蓄積性有害化学物質の製造・輸入・使用が規制されていますが、製造・輸入禁止物質は18種類に留まり、生活や産業上への影響から、有害化学物質の多くを製造禁止できない現状があります(化審法と化管法の概要の詳説ファイルhttp://eco.pref.miyazaki.lg. jp/gakusyu/chikyu/6/index.html)。

2)揮発性有機化合物(VOC)によるシックハウス症候群

 VOCとはVolatile Organic Compoundsの略で揮発性化合物のことです。ホルムアルデヒドやベンゼンなどの有害物質の他に、塗料・接着剤・ワックスなどに含まれる有機溶剤や香料成分などがあります。VOC健康被害には、目やのどの痛み、めまい、吐き気、頭痛などの症状がでるシックハウス症候群と、多発的にアレルギー症状と精神不安定などの症状がでる化学物質過敏症があります(VOCの詳説ファイル http://eco.pref.miyazaki. lg.jp/gakusyu/chikyu/7/index.html)。

(2)有害化学物質による生体汚染を防ぐには

1)蓄積性化学物質への対処

 ダイオキシンは、植物繊維や葉緑素(クロロフィル)が多い食物を食べると、体内半減期が短くなるとの動物実験結果 があります。食物連鎖で海洋の魚介類などに生物濃縮されるPCBやDDTなども、食生活を野菜・穀物中心にすると人体汚染は緩和できます。
 
最近制定された「化学物質排出把握管理促進法(化管法)」は、有害化学物質の環境中への排出を監視して防ぐために、事業者が有害化学物質の製造・使用・移動および廃棄量 を把握して届出する制度(PRTR制度)で、環境汚染状況が把握できるようになっています。
  国がデータを集計し、環境中への排出の状況を公表するので、動向について注視する必要があります。

2)VOCへの対処

 VOCを規制する法律はまだ制定されておらず、住宅建築業界などで自主規制値が定められています。室内VOC濃度を下げるため、室内換気を十分してVOCの発生が少ない家具などの環境整備が自己対策となります。

11 エネルギー問題

 エネルギー消費の増大と経済発展・生活の向上は、直接結びついています。しかし、21世紀を迎え、 世界、特に 日本を含む 先進諸国は 大きな発想 の転換点に遭遇しています。
  なぜなら、今のままでエネルギー使用の増大が進めば、温室効果 ガス濃度が一層上がり、近い将来に人類は破局点を迎える可能性があるからです。
  エネルギー使用状況をよく知り、何をなすべきか考え、行動することが、未来の子どもたちに対する今を生きる私たちの使命でもあります。

世界のエネルギー消費

世界のエネルギー消費は、開発途上国の急速な発展や経済成長を背景とした人口の増加とともに、確実に増え続けています。特に日本を除くアジア地域のエネルギー消費の増大が目立ち、今後もまだまだ増え続ける見通 しです。

(1)エネルギー資源の今/未来と問題点

 OECD(経済協力開発機構、加盟25か国)のエネルギー消費が世界全体の50%を超えています。南アジアと中央アフリカなどには農作物や家畜の糞など、非商業エネルギーだけで暮らしている人が10億人もいます。また。20億人の人が電気のない生活を送っています。エネルギー消費量 の削減は、OECD諸国等の先進国の世界に対する責務ともいえます。
  日本では1970年代に二度の石油危機(オイルショック)を経験し、日本の石油依存体質の問題が浮き彫りにされました。
  このため、1980年以降は石油に代わるエネルギー開発を進め、ガス(主として天然ガス)と原子力のエネルギー消費が伸びています。自然エネルギーの利用は現在4%程度と低い割合ですが,今後風力や太陽光発電などの利用拡大を図るべきです(エネルギーの現状と課題の詳説ファイル https://eco.pref.miyazaki.lg.jp/gakusyu/chikyu/8/index.html)。

(2)エネルギー消費を押さえる工夫

 技術革新による生産のエネルギー使用効率の向上等の取組は、企業等では既に行われていますが、より全体的に掘り下げた対策を進めていく必要があります。

1)環境対策税

 環境省などで導入に向けて検討している環境税もその一つの対策です。現在検討されている案では、ガソリンの価格にリットル当たり1.5円程度の課税をするなどして、その税収を森林整備等の温室効果 ガス削減のための事業の財源にするというものです。また価格が上がることにより、石油の消費の抑止効果 も狙っています。

2)一人ひとりの省エネ

 エネルギー消費の削減(=地球温暖化防止の基本)は、一人ひとりのライフスタイルを見直すことが大切です。
  例えば、日本の一人、一日あたり石油換算エネルギー消費量12.1リットルをカロリーで表すと、石油1リットルの発熱量 は約9,250kcalですので112,000kcalとなります。これは、成 人が一日に食べ物から摂取するエネルギー2,600kcalの43倍にもなります。人間は食べ物さえあれば生きられるはずで、この膨大な消費を押さえ込まない限り、人類の将来にわたる生存の保証は、難しいものとなります。

 


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