第3章 宮崎県の環境を巡る動向

1 環境にかかわる県勢の概況

(1)地 勢

 本県の総面積は約7,735嘯ナ国土の約2%に当たり、全国14番目の広さです。山岳地帯を水源として五ヶ瀬川、耳川、小丸川、一ッ瀬川、大淀川など流路70q以上にわたる河川が太平洋にそそぎ、豊富な水資源をもたらしています。

(2)人口・世帯数

 平成15年10月1日現在の本県の人口は、 1,163,489人(男547,926人、女615,563人)です。
 
本県人口は、現在、微減傾向が続いています。また、本県の世帯数(平成15年10月1日現在)は増加を続け、453,349世帯となっています。

(3)産 業

 本県の産業構造をみると、従業員数、総生産額とも第3次産業の割合が高いものの、全国的には、産業全体に占める第1次産業の割合が最も高い県の一つとなっています。また一人当たり県民所得は、平成14年で2,446千円となっています。

(4)土地利用

 平成14年10月1日現在の土地利用区分は、県土のおよそ4分の3が森林となっており、次いで農用地の割合が高くなっています。

(5)道路交通

 平成15年4月1日現在における県内道路網は、高速自動車国道3路線、一般 国道18路線(直轄分2路線、県管理分16路線)、主要地方道48路線、一般 県道149路線、市町村道31,030路線の総計31,248路線に及び、実延長は19,594qです。  本県の自動車保有台数は平成15年3月末で874,718台であり、平成5年から平成15年までの10年間で155,318台(21.6%)増加しています。

2 生活環境の概況と県の取組

(1)大 気

 大気汚染防止法に基づき、一般環境大気測定及び自動車排出ガス測定の常時監視測定局並びに大気環境測定車で継続的に大気の状況を監視しています。
  平成15年度の大気の状況は、二酸化硫黄、二酸化窒素、浮遊粒子状物質及び一酸化炭素については、全測定局で環境基準を達成していました。光化学オキシダントは、全測定局で環境基準を未達成でしたが、緊急時の警報発令基準を超えたことはありませんでした。本県の大気環境は概ね良好でした。

(2)水 質

 水質汚濁防止法の規定により水質測定計画を策定し、これに基づいて公共用水域及び地下水の水質の常時監視を行っています。
  平成15年度の公共用水域の水質の状況は、代表的な水質指標であるBOD又はCODでみると、全ての水域で環境基準を達成していました。
  地下水の水質状況については、調査した186本の井戸のうち、砒素について3本、テトラクロロエチレン等の有機塩素化合物について13本、硝酸性窒素・亜硝酸性窒素について3本が環境基準を超えていましたが、その他の井戸は環境基準に適合していました。

(3)騒音・振動・悪臭

 騒音・振動・悪臭は、各種公害の中でも日常生活と密接な関係にあります。平成15年度の公害苦情件数のうち、悪臭に係るものが約18%、騒音に係るものが約8%で、苦情全体に占める割合が高くなっています。

3 自然環境の概況と県の取組

(1)野生動植物

 本県の気候は温暖多雨であり、また標高1,500m前後の山岳が連なっているため、植物相は多様で、照葉樹林の自然植生のほか、沿岸部ではビロウ、ハマカズラ、ハマオモトなどの熱帯性、亜熱帯性植物もみられます。また、本県の北〜西部の山地帯の温帯性夏緑広葉樹林には、ブナ、ミズナラ、シナノキなどが生育しており、ブナクラスの南限域となっています。
  県内で生息が確認されている動物では、哺乳類のニホンカモシカが国の特別 天然記念物に指定されているほか、鳥類のクマタカ、ハヤブサ、ヤイロチョウなど種の保存法指定種も含まれています。また、両生類では環境省レッドリスト掲載種のオオイタサンショウウオ、ベッコウサンショウウオ、オオサンショウウオなど、は虫類ではアカウミガメ、アオウミガメ、スッポンなど、昆虫類ではグンバイトンボ、ルーミスシジミ、タガメなどの希少種が生息しています。  なお、希少種については、平成12年に県版レッドデータブックを作成し、啓発を行っています。

(2)自然公園等

 本県には、国立公園が霧島屋久国立公園1か所、国定公園が日南海岸など4か所、県立自然公園が尾鈴県立自然公園など6か所があります。利用者は、平成15年では830万人であり、県民総人口の約7倍の人が自然公園を利用しています。
  その他、自然環境の保全と創出を目的として、自然環境保全地域2か所、緑地環境保全地域4か所が設定されているほか、緑地保全樹木の指定、鳥獣保護区、休猟区、銃猟禁止区域、保安林の設定を行っています。

4 文化財、天然記念物

 本県は歴史的・文化的遺産が数多く分布し、重要文化財(有形文化財)13件、重要有形民俗文化財3件、特別 史跡1件、史跡18件が国指定となっているほか、県指定有形文化財50件、県指定史跡が96件あります。
  自然環境にも恵まれており、「青島亜熱帯性植物群落」など国指定の特別 天然記念物4件をはじめ、国指定天然記念物41件、国指定名勝4件(うち、1件は名勝天然記念物)、国指定重要伝統的建造物群保存地区3件、県指定天然記念物19件、県指定名勝7件などがあります。

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5 森林及び植生の動向

(1)本県の森林

 西日本の森林を代表する森林は照葉樹林です。照葉樹林は日本人の生活と文化を古代から支えてきた重要な生態系です。稲作農耕や畑作農耕を最初に受け入れ、日本人の生活の基盤をつくった環境が発達したのは照葉樹林の立地があったからなのです。
  しかし環境庁(1988)の第3回環境保全基礎調査結果(緑の国勢調査)では、照葉樹林の自然林は宮崎を中心に点在分布の状態でしか残されていないことが分かりました。
  宮崎県内の照葉樹林やブナ林の自然林は、国定公園や県立公園を中心に残されています。面 積を合計するとおよそ100嘯ナす。これは県土の約1.3%に相当します。
  本県の森林は、県土の76%を占めていますが、人工林や二次林が多くを占めています。
  右図は、緑が本来の照葉樹林の生育範囲、ピンクが本来のブナ・ミズナラ林の生育範囲、黄色が火山草原の生育範囲、黒の塗りつぶしが現在残されている照葉樹林とブナ・ミズナラ林の自然林の部分です。
  これらの自然林をできるだけそのままの形で次の世代に残していく必要があります。

(2)本県の維管束植物のレッドデータリスト掲載種

 宮崎県内に自生する植物約2552種の中で、絶滅の危機に瀕している種は646種です。これは全体の約25%に相当し、4種に1種が危機に瀕していることになります。この数値は最低数で、実際にはもっと高いものと考えられます。中でも深刻なのがラン科植物で、県内に自生するラン科植物103種(変種を含む)中83種が危機に瀕しています。理由は自然林の消滅と美しい花目当ての盗採(盗掘)です。

6 動 物

(1)宮崎県の野生動物の問題

 宮崎にはどれくらいの動物がいて、どれくらいの種類の動物の絶滅が心配されているのでしょうか。

  上の表のとおり本県の陸上及び汽水・淡水域に生息する脊椎動物の種類では463種が確認されていますが、その内の約8.6%の40種は、絶滅の危機に瀕しています。宮崎県版レッドデーターブック(2000年)にはこの他、昆虫の絶滅危惧種55種を含め、無脊椎動物でも101種の動物の絶滅が危惧されています。

(2)本県で絶滅した動物

  本県で絶滅したと考えられる代表的な動物は、ほ乳類のツキノワグマ、ニホンカワウソ、ニホンオオカミ、昆虫類のスジゲンゴロウがあげられます。
  宮崎県にも過去には熊がいた記録があります。ツキノワグマ、ニホンカワウソの2種のほ乳類については過去に本県に棲んでいたという記録が残っています。
  ニホンカワウソについては河川の中下流部から海に接する部分を好みますので、その棲んでいる場所の条件が悪化したことも絶滅につながったと考えられています。
  また、ニホンオオカミについても県北の山地で生息していたとの情報があります。

昭和54年頃高知県須崎市で撮られた日本カワウソ(高知県須崎市)
http://www.city.susaki.ko-chi.jp/index.html

(3)捕獲等の問題

 ツキノワグマ、ニホンカワウソの絶滅は狩猟・捕獲等も原因の一つと考えられます。天然記念物のニホンカモシカも現在依然として密猟が見受けられます。この他にも、観賞用の鳥類オオルリ、飼育用の昆虫クワガタムシなどについて大量 に捕獲されている実態があります。

(4)海外等からの侵入種による問題

 生物はそれぞれ特別の生息環境が必要です。もしそこに、今までいた生物以上に生活力のある種類や今までいた種類を攻撃する種類が侵入すると、もとからいた種類が簡単にその生活場所を受け渡してしまうことになり、絶滅などが心配されることとなる可能性も高くなります。現在、本県で心配されている海外等からの侵入種の主なものは次のとおりです。

【ほ乳類】チョウセンイタチ(本来は、朝鮮半島・台湾・中国に分布)、【鳥類】コジュケイ(中国南部・台湾原産)、ソウシチョウ(本来は、中国南部・中部に分布)、【は虫類】ミシシッピアカミミガメ(アメリカ東南部原産)、【両生類】ウシガエル(北アメリカ原産)、【魚類】ブルーギル(北アメリカ中東部原産)、ジルティラピア(モロッコ・パレスチナ原産)、ブラックバス(北アメリカ原産)、【昆虫類】イネミズゾウムシ(アメリカ東南部・メキシコ等原産)、ミナミキイロアザミウマ(東南アジア原産)マメハモグリバエ(アメリカ東部原産)、アルファルハタコゾウムシ(ヨーロッパ・北アメリカ原産)、ヤサイゾウムシ(ブラジル原産)、【貝類】サカマキガイ(ヨーロッパ原産)、スクミリンゴガイ(南米原産)【甲殻類】アメリカザリガニ(メキシコ原産)

(5)生態系への影響

 大型の動物の個体群の維持のためには数十q四方の自然林が必要であり、クマやカモシカなどのほ乳類、イヌワシやクマタカなどの大型猛禽類の行動圏はもっと広く、多くの自然林が必要です。
  河川改修や農地の開発にともなう草原や湿地の減少によっても生物種が減少しています。
  また河川の汚濁、河川や海岸の護岸工事、4輪駆動車等による海岸への乗り入れ、魚釣りのテグス等の廃棄物が、それぞれの生物域に棲む動物、例えば魚類全般 、砂浜のアジサシなどの鳥類、アカウミガメ、汽水域の干潟に生息するシオマネキやハクセンシオマネキなどの甲殻類や貝類等の生息環境を脅かしています。
  内陸部では、大規模な耕地整理、側溝の改修などにより水田近くの水たまりが減少し、そこで繁殖する生物のオオイタサンショウウオ、イモリ、メダカ、トノサマガエル、タガメ、タニシなどが大幅に減少しました。

 


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