第2章  地球と我が国の環境を巡る動向

1 地球温暖化

(1)地球温暖化の原因

 地球の年平均気温は過去100年の間に地球全体で約0.6度、日本では約1度上昇しています。原因は二酸化炭素やメタン、フロンなどの温室効果 ガス濃度の上昇によるものと考えられますが、 その中で、最も 人の活動に伴う排出量 が大きい二酸化炭素の濃度は上図のとおり確実に増加しています。  二酸化炭素などの温室効果 ガスが増えるとなぜ、地球温暖化が進むのでしょうか。
  太陽放射(太陽から射出される可視光線や赤外線、紫外線などを含む電磁波の総称)により地球は温められます。温められた大地からは赤外線が放射されますが、赤外線は水蒸気と二酸化炭素で吸収されるものと、吸収されずに宇宙に逃げていく分があります。このバランスがうまくとれて地球表面 の気温は一定(年平均約15度)に保たれています。もし地球に水蒸気と二酸化炭素がなければ約−18度になります。
  しかし増え続ける温室効果ガスは、本来、宇宙に逃げていくはずの赤外線を過度にとらえ、地球の気温を上げていきます。

(2)気温の上昇

 地球の気温は右図のように変動しながらも、確実に上昇しています。
  上図は宮崎市の1886年以降の年平均気温と、五ヶ瀬町鞍岡の1980年以降の変化を示しています。この20年ほどで急に上昇していることが分かります。宮崎市は都市熱の影響も考えられますが、都市熱の影響がない五ヶ瀬町鞍岡も同じように気温が上昇しています。

(3)地球温暖化がもたらす影響

1)海面上昇

 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、今後100年間に地球の平均気温が最大5.8℃、海面 が88cm上昇すると予測しています。
  温暖化は、南極や北極の氷、世界各地の氷河などの減少をもたらし、その結果 海面上昇をもたらします。

アンデス山脈から押し出される氷河
   
南洋島●国ツバルの首都フナフチ島、内陸から沸き上がった水により浸水している。2002.5 Green peace/Masaki Nakajima

2)異常気象の多発化、台風の大型化

 地球が温暖化すれば、蒸発する水分が増え、雨が多くなるはずです。しかしそう単純なものではなく、温暖化の計算モデルでは、雨の降る地域と乾燥する地域ができ、雨の降り方は集中豪雨のように激しく降るところが多くなると予想されています。実際、宮崎県内でも近年体感されますし、世界中でこのような事象が起きています。
  また、海面水温が高くなり、台風やハリケーンの巨大化が予想されています。
  2004年のハリケーン「アイバン」は最大瞬間風速90メートルに達しました。同じ年、朝鮮半島や中国大陸南部では集中豪雨、反対にアラスカは夏以降高温少雨で森林火災が起きています。世界的に気温が高く、日本の夏は猛暑で、台風上陸が年間10個と過去最多になり、日本列島は大きな災害を被りました。

3)動植物への影響

 また、地球温暖化により植物や動物分布にも影響が出始め、北限植物の分布が北に押し上げられたり、これからは異常気象の多発化が懸念されます。将来は本県の椎葉村、五ヶ瀬町境に分布するブナ林の消失等も予測されています。
 身近な昆虫として本来は南方系のセミであるクマゼミが本県でも多数種になってきています。
 また蚊などの活動範囲も広まり、将来日本でもマラリア、デング熱等の感染症の発症が懸念されます。

シナハマダラカ
3日熱マラリアを媒介。水田に生息している。(2003.8 国立感染症研究所昆虫医学部)

 

 

4)ヒートアイランド現象

 都市の気温の分布を調べると、都市化の進展に応じ、都市の中心地は郊外に比べて高くなっています。図にすると、熱の分布が島(アイランド)のようになっているため、ヒートアイランドと呼ばれている現象です。
  大都市ほどヒートアイランドの現象は強く、過去100年で年平均気温が、東京都心では約3度上昇しています。都市集積により舗装面 やコンクリートの建物が多く、その上、自動車、エアコンや暖房施設からでる廃熱が多いことが原因となっています。都市化して、最低気温が25度以上の熱帯夜が増えると寝苦しくエアコンを使うことが多くなってきますが、このことが更にヒートアイランドに拍車をかけています。
 宮崎県でも温暖化や都市化により熱帯夜が増えています。下図のとおり宮崎市と日南市油津の熱帯夜の日数は増加しています。

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(4)温室効果ガスの排出状況

1)世界の温室効果ガスの排出量

 温室効果ガスは、アメリカや日本などの先進国においても削減は進まず、また中国やインドなどの多くの人口を抱える途上国で電化や車の保有が進んでおり、世界の温室効果 ガスの排出は今後も増え続けることが予想されます。

2)日本の温室効果ガスの排出量

我が国の温室効果ガスの2003年度の総排出量 は13億3,900万tで、京都議定書に定める基準年(1990年)と比べて8.3%増加しています。(地球温暖化の詳説ファイルhttp://eco.pref. miyazaki.lg.jp/gakusyu/chikyu/2/index.html)

2 オゾン層破壊と有害紫外線

(1)オゾン層の役割

 オゾンが多く含まれる高度10qから50q(高度20qが最も多い)の大気の層をオゾン層といいます。層といっても他の気体分子に比較してオゾンは極少量 です。
 オゾン(O3)は酸素分子(O2)と原子(O)が結合して作られます。大気中にある酸素分子に紫外線が当たると、酸素分子は紫外線を吸収して酸素原子に分裂します。この酸素原子が酸素分子と結合してオゾンができます。
 このオゾンは太陽から届いた光の中の有害紫外線を吸収してくれます。オゾン層がないと有害紫外線が地上に届き、生物の遺伝子をつかさどるDNA(デオキシリボ核酸)を破壊してしまいます。ですからオゾンは生物が地上で生活していくためになくてはならない物質で、オゾン層はかけがえのない保護層(シールド)なのです。
 地球の生成からみてみますと、オゾン層は、約25億年前に出現したシアノバクテリアが酸素を供給し始め、形成されていきました。オゾン層の形成により有害紫外線が吸収され、生物が住める地上環境が整えられました。この間に20億年以上もの長い時間がかかっています。オゾン層は地球の長い歴史の中でゆっくりと時間をかけてつくり上げられたものなのです。

(2)紫外線について

 紫外線は1.UV−A(波長315〜400nm)2.UV−B(280〜315nm)3.UV−C(100〜280nm)に分けられます。
  紫外線の中で最も波長の短いUV−Cは成層圏の大気によって吸収されるので影響はありません。UV−Aはシミやしわの原因になりますが、致命傷になることはありません。問題なのは地上にわずかに届くUV−Bです。UV−Bは皮膚ガンや白内障、免疫の機能低下の原因になります。オゾン層のオゾンが減ると、オゾンが吸収していたUV−Bの地上に届く量 が増える事になり、これらの発症率の増加が懸念されます。

(3)オゾン層を破壊するフロン

 オゾン層は化学物質フロンによって破壊されてきました。フロンは引火性が低く安全で、断熱性がよく、冷媒・溶媒として優れた特性があり、エアコンや冷蔵庫等の冷媒、スプレーの噴射用、電子部品の洗浄用など多方面 で使用されてきた化学物質です。フロンは成層圏まで運ばれ、強い紫外線を受けて分解し、塩素を発生します。この塩素がオゾンを次々に破壊するのです。
  オゾン層を守るため、フロンなどオゾン破壊物質の生産全廃をめざすことが1987年のモントリオール議定書で定められました。  しかし、今でも海外においてはフロンが生産されています。一方、我が国ではフロン回収破壊法(特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律)を制定し、カーエアコンや業務用冷凍空調機器等からの廃棄の際のフロンの回収を義務付けています。
  関係業者やまた我々ユーザーの的確な認識と管理意識が必要です。

(4)有害紫外線対策

a 初夏から秋にかけて、日差しの強い期間の昼の時間帯(10時〜14時)は直射日光を浴びないようにする。
b 外出時は帽子、日傘を使う。帽子はつばの広い物が良い。
c サンスクリーン剤やUV化粧品を使う。
 紫外線を浴びても、日焼け以外はすぐに影響は出ませんが、何年も強い紫外線を浴び続けることによって、皮膚ガン、白内障などの病気になる危険性が高くなります。
  元宮崎公立大学学長の内嶋善兵衛氏の調査によると、4月〜9月間を通 じて有害紫外線量は0.5MJ/uを超えており、野外での作業やスポーツは注意が必要であるとしています。 (オゾン層破壊と紫外線の害の詳説ファイルhttps://eco.pref.miyazaki.lg.jp/gakusyu/chiyu/3/index.html)

 


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