第1章 かけがえのない地球

1 生物圏(biosphere)

 地球という惑星のうち、私たち人間を含めて生物が住むところを生物圏と呼びます。植物、動物、菌というあらゆる生物は地球の表面 の海(水圏)、陸地(岩石圏)、大気(気圏)のどこかにしか住んでいません。それは地球の半径の300分の1以下、20kmというとてもわずかな部分でしかありません。
 今、世界中で問題になっている環境破壊は、まさにこの薄い生物圏でのみに起こっていることです。

2 地球生態系〜その完全なリサイクル

 生物圏には、岩石や土砂、水、空気、光、温度などの無機的な要素と、植物、動物、菌などの生物要素があります。
 生物のうち、陸地の植物は、その根で地中の水(H2O)を吸いあげて葉に運び、葉では葉の裏側にある気孔から空気中の二酸化炭素(CO2)をとりこみ、この二つの無機物を原料にし、太陽の光をエネルギーとして葉緑体の働きで光合成を行います。植物は、光合成によって自分の体をつくり、生きていくために必要な有機物を作り出すとともに、空気中に酸素(O2)をはき出しています。
 動物と菌は、植物とちがって葉緑体を持たないので、無機物から栄養を作り出すことは出来ません。そこで植物食動物(草食動物)は草の葉や茎、種子や果 実を食べることによって必要な栄養とエネルギーをとっています。草食動物を捕らえて食べる動物もいますが、それも元をたどれば植物があるからできることです。
 さらに、菌は、植物や動物の生きた体や死んだ体、排泄物などいろいろな有機物の中に入り込んで、周りの有機物を分解して、菌の体の中に吸収して栄養にしています。菌は最終的に、全ての有機物を分解して、元の水と二酸化炭素のような無機物にもどし、大気や土の中に返します。
 このように生物圏では、無機的要素と生物要素の間で絶え間ない物のやり取り(物質循環)を行っていて、この関係を総合して、地球生態系(globale cosystem)と呼びます。
 自然の生態系では、物質循環は過不足なく行われていて、余計な物質や廃棄物は出ない完全なリサイクルが行われます。
 では、この地球がどのようにしてできたかをみていきましょう。

3 地球の成り立ちと生命の誕生

(1)地球の誕生

 今から約46億年前、太陽系の中でまず太陽が生まれ、その周りで、塵サイズの粒子が集積して多くの微惑星ができました。それらの微惑星が互いに衝突・合体して少数の惑星が生まれました。地球は太陽との距離の絶妙な位 置にできました。なぜなら、生命体が誕生してから進化していくために必須であった海をつくる水は、太陽と地球間の距離の0.65倍から1.2倍の間でのみ、液体として地表に存在できるからです。この距離よりも太陽に近いと水はすぐに蒸発してしまい、遠いと凍結してしまいます。
 形成途中の地球へ、周辺にあった残りの微惑星が速い速度で衝突し、そのエネルギ−で地球が温められました。この衝突によってCO2やH2Oなどが地球本体から多量 に抜け出し、地球大気になりました。現在よりも10万倍も濃い当時の大気中のCO2は、大きな温室効果 で地表温度を高い状態に保ち、地下1000m深くまで高温のドロドロと融けた状況(マグマオ−シャン)を作り出しました。
 周辺の微惑星がほとんど地球に飛び込み終わった時点から、地球は表面 から徐々に冷え、大気中に多量にあったH2Oは大気中のいろいろの物質を溶かし込んで雨となり、地表に降り注ぎ強い酸性の原始の海となりました。

(2)陸地の誕生

 約41億年前位から、マントル対流により海洋地殻が作り出されました。そして対流により再び沈み込む部分の地殻が、地下で溶融しマグマとなりました。このマグマが地表に上昇し、冷えて花崗岩からなる地殻を作り、海の上に顔を出しました。それが大陸のはじまりです。
 その陸地の降雨によって岩石中の金属元素が陽イオンの形で海に流れ込み、強酸性の海水を作っている陰イオンと結びつき、海水は徐々に中性となりました。
 その結果、大気中のCO2が海中に次々と溶け込むことができ、Ca2+と結合して、海底に堆積し、大気中にあった多量 CO2が地殻に固定されました。そのため、大気の温室効果が減少し、大気や地表の温度はさらに下がっていきました。

(3)生命の誕生と酸素の供給

 海嶺(海底山脈)では、マグマと海水との熱水反応が生じ、アミノ酸や糖が形成・蓄積され、それを使って蛋白質や自己複製機能を持ったRNAやDNAが作られていき、約35億年前に遺伝情報を持った小さな生命体が生まれました。
  それからまた約25億年前には、浅い海で、地球に降り注ぐ太陽光をうまく利用し、光合成を行うシアノバクテリア(藍藻)が誕生、大繁殖し、たくさんの酸素を作り出し、大気中に放出・蓄積していきました。
  このように、大気中に存在する酸素は地球の誕生以来、長い期間をかけて徐々につくられてきたものなのです。

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(4)オゾン層の形成と生物の陸上への進出

 太陽からの紫外線がこれらの酸素に当たり大気上層部でオゾン層がつくられ始めると、オゾン層は、有害な紫外線を吸収し、地上で生物が生息できる環境をつくり出していきました。そして、約4億年前になって生命体の一部がやっと海中から上陸してきました。
 これ以降の地球表面では、地殻と海洋と大気との間で互いに複雑な作用を及ぼし合い、そこに生命活動も介在して、大気中のCO2の量 をさらに減らしていきました。
 その後、生物種の大繁栄や大量絶滅をもたらす海底地形の変化、大陸の移動や消長等による海水の循環や気候の変動が度々引き起こされて、今の地球の姿となっています。
(地球の成り立ちの詳説ファイルhttp://eco.pref. miyazaki.lg.jp/gakusyu/chikyu/1/index.html)

4 地球的な環境破壊の進行

 このようにして、地球は約46億年かけて、大気成分が、窒素78%、酸素21%、二酸化炭素0.04%となり、全地球平均気温15℃という生き物が生育していく上で快適な環境をつくってきました。
  そして、諸説はありますが、約800〜500万年前に類人猿から進化した人類の祖先が登場し、約3万年前に人類の直接的祖先と考えられる新人(クロマニヨン人が有名です)が出現しました。  地球誕生から現在までの時間を1週間に例えると日曜日の午前零時に地球が誕生し、土曜日の午後11時59分58秒位 から人類の歴史が始まります。そして現在の地球環境に影響を与え始めるこの200年間の時間は、日曜の午前零時になる前のほんの0.04秒です。このわずかな時間に人類は、長い時間をかけてできあがった地球環境に対して、自らの生存基盤を脅かす様々な影響を及ぼしているのです。(参考URL 宇宙情報センターhttp://spaceinfo. jaxa.jp/note/shikumi/j/shi_j.html)
  今私たちが住む生物圏で、さまざまな環境破壊が、日々進行しています。地球の温暖化、オゾン層の破壊、酸性雨、環境ホルモン汚染、放射能汚染、森林の伐採、砂漠化など、地球上のあらゆる地域で起こっています。
  これらの環境問題の進行とともに、異常気象が発生し、大きな災害を生む原因にもなっています。そして、私たち人間の健康や命が損なわれるとともに、多くの生物が絶滅しています。

世界の熱帯林の40%を占めるアマゾンの熱帯林は現状のペースでいくとあと数十年で消失すると言われています。
写真提供 RFJ URL http://www.rainforestjp.com/index.htm

(1)環境破壊の原因

 では何故このような環境破壊が進んでいるのでしょうか。
  私たち人間も、他の動物と同じように生命を維持し、子孫を残すためには食べ物によって栄養やエネルギーを得ています。今、日本人が1日1人あたりに食物でとるエネルギーは、平均で約2,600kcalです。しかし、人間は他の動物と違って、食物以外にも衣服や住まいや道具などいろいろな物を使って生活します。特に、20世紀後半には、私たちの生活は、「豊か」で「便利な」ものになりました。今、私たち日本人は、食物以外 で消費するエネルギーは1日1人あたり、約112,000kcalにのぼっています。これは、食物でとるエネルギーの実に43倍になります。そして、それは増加の一途をたどっています。

(2)循環しきれない多量のエネルギー使用と製品の製造

 18世紀の産業革命以後、人間は地下資源である石炭や石油(化石燃料)を掘り出して、それを燃やしてエネルギーを得たり、新しい物を作り出していきました。
 その結果、工場や車を動かしたり、電力を作るために多量の化石燃料を燃やすことで地球温暖化をもたらしたり、プラスチック等の便利な使い捨て製品を多量 に作り出しました。

 またフロンガスは1928年に発明され、化学的安定性や工業的に多くの用途があり「夢のガス」として多量 に使われましたが、オゾン層を破壊しています。
 「酸性雨」は、燃料を燃やすことによって出る窒素酸化物や硫黄酸化物が原因です。また、このほかに人間が発明した便利な新しい物質の中には、今までに自然界では見られなかったような影響を与えるものもあります。それが野生動物や人間のホルモン作用を乱している環境ホルモン汚染です。
 我々の「豊かで便利なもの」を求める暮らしは、自然に循環しきれない排気ガスや廃棄物を排出し、自然の生態系を壊し環境破壊につながっているのです。
 さらに、人間はさまざまな理由で、森林の伐採を続けています。このままでいけば、アマゾンの大森林は21世紀の半ばにはなくなってしまうといわれています。また2003年の地球人口は、63億人を数えており、今後も、アジア、アフリカを中心に増え続け、2050年には約90億人にのぼると言われています。
 これらの人口増加は、食料や水、貧困等の問題を更に深刻化するばかりでなく、畑地の拡大や燃料のための森林伐採につながり、その結果 、森林に住む多くの動物や植物が絶滅し、地球の温暖化はさらに加速されることになります。
 それでは次章で、地球環境がどういう現状にあるのかみていきましょう。

1990年代に行われた大規模な皆伐の跡。永久凍土の上にあるシベリアの森林が伐採や火災で失われると、凍土が溶けてメタンガスが発生。その結果 、地球温暖化を加速させる。
撮影:カメラマン 伊藤孝司氏
(URL:http://www.jca.apc.org/~earth/)

 

 

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