第4章 循環型社会づくりのために
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(3)木材の生産と利用のサイクル

 住宅をはじめとして、地球上で利用された木材は、やがて土に返って腐ったり、燃やされたりして、最後は空気中に二酸化炭素を放出します。この二酸化炭素は再び森林吸収され、森林資源として成長していきます。このように木材は、繰り返し生産できる理想的な循環システムをつくることが可能です。

(4)木材は、つくる時にも環境に優しい

 製材品や木質材料などは、製造・加工時に空気中に放出する二酸化炭素量 が格段に少ないため、より環境に優しい材料と言えます。

(5)森林と木材によって循環型社会を造る

 鉄やプラスチック等は、生命力を持たないため、資源の再生産を行わず、廃棄材と資源がつながりません。ここに生物資源である木材と鉱物資源、化石資源との間に資源の持続性、再生産性の面 で決定的な違いがあります。
 木材は、自己の生命力と太陽エネルギーによって資源そのものの再生産が可能であり、伐ったら植えるという基本原則を守れば、木材は人類が持続的に確保できる唯一の資源であり、その資源を活用することができれば、循環型社会を創出することも可能です。
 従って木材や木製品の積極的な利用が望まれます。

 
宮崎市内の保育園
子ども達は米糖袋で毎日愉しく床を磨いています。
  日南市は全小学校に木製の学童机を導入しました。
 
全天候型屋内運動施設 木の花ドーム
屋根材として杉を利用した全国でも指折りの大型ドーム

5 身近な自然環境を守り育てる取組

(1)里山の現状

 里山とは、都市と森林の中間にあり、農村集落と農村の人々が生活の場として利用してきた森林と周辺の水田や畑をひとくくりにしたものをいいます。
 最近、里山の面積は宅地化・都市化の影響で減少し、また残された里山も人々が利用しなくなり、荒廃していると言われています。次のグラフでも分かるように、宮崎県においても平成4年から14年にかけて、道路や宅地が増加し、農地や森林が減少して、里山が減少しています。

 最近は、里山を人々が利用しなくなり、竹林化している所が多くみられます。また用水路の改修等により、メダカ、ゲンゴロウやトノサマガエルなど従来の里山の生き物を見かけることが少なくなりました。
 また、里山周辺の森林もスギを中心とする単層林が多いため、里山特有の動植物が減少し、里山の自然の多様性を悪化させている原因となっています。

(2)干潟及び湿地の減少

 干潟は陸地と海の間にあり、環境的にも重要な役割を果 たしています。湿地は貴重な植物の宝庫であり、環境浄化にも重要な役割を持っています。
 第4回自然環境保全基礎調査(1994年、環境庁発表)によると、9か所(151ha)の干潟が消滅し、8か所(42ha)の干潟が現存していると報告されています。宮崎県内でも埋立工事などにより、前回の調査からの10年間で78%(151ha)以上の干潟や湿地が減少しています。

(3)里山や干潟の大切さ

 里山や干潟には、資源生産(木材生産・林産物栽培等)や水源涵養・水質浄化及び野生生物の生息・生育環境などの素晴らしい機能があります。いろんな生き物の姿を見かけなくなっている現状を考えると、多様な生態系構成の場を確保するためにも里山や干潟の保全がとても大切です。

(4)環境NPO等の取組

 最近、里山や干潟及び湿地の自然環境を保全するための活動が、環境NPOや自然保護団体で取り組まれています。森林は漁業にとっても大切な役割をはたしています。そのための森林として魚つき保安林が県内では196ha(宮崎林業統計要覧平成16年3月)指定されています。また、失われつつある自然環境を守っていくためには、自然環境の重要性を意識づける環境教育も欠かせません。
 これらの自然環境保全活動の一部を紹介します。
・森林の整備については、ロキシーヒルやどんぐり千年の森をつくる会などによる森林の育成等があります。
・漁業者による森林の整備については、串間市漁業協同組合などの照葉樹や広葉樹を中心とした漁民の森の整備等があります。
・湿地の保全については、植物研究会や宮崎グリーンヘルパーの会などによる湿地の保全作業等があります。
・干潟の保全については、ひむか里山自然塾の一ッ瀬川河口等でのリバーフロントスクールや宮崎野生動物研究会のウミガメ保護活動等があります。

宮崎野生動物研究会によるコサアジの観察会

・自然環境をテーマにした、環境教育として、ある環境NPOでは、生き物を題材にしたプロジェクトワイルドや人の五感を活用したネイチャーゲームによる環境教育を実施しています。
(参考URLhttp://eco.pref.miyazaki.lg.  jp/e_katudo/ippan/index.html)

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6 エコライフの実践

 我が国の平成15年度の1世帯当たりの温室効果 ガス排出量は約5,500kg(Co2)で1日当たり15kgとなり、杉の木50年生が1年間に吸収できるCO2量 (14kg)を超えます。私たちは暮らしの中で、森林が吸収しきれない膨大な温室効果 ガスを排出し続けます。
 私たちのどのような暮らしぶりが温室効果ガスの排出につながっているかに気付き、ライフスタイルを見直し、将来にわたる持続性を考えたエコライフを実践する必要があります。

(1)増え続ける身の回りの便利なもの

 私たちの身の回りには車や、コンビニ、自動販売機、新たな電気製品等便利で快適なものがたくさん増え、エネルギーの増加、温室効果 ガスの増加につながっています。
 これらの身の回りの便利なものに頼り切らないことがエコライフの第一歩です(国立環境研究所エコライフガイドURL http://www.eic.or.jp/ library/ecolife/index.html)。

1)コンビニの電力消費
 コンビニは24時間開いて便利ですが、コンビニ1軒あたりの電力消費量 は1日およそ350〜500kwhになります。日本の世帯の1日平均12.5kwh(平成14年度)と比べると30軒以上分となります。

2)自動販売機の電力消費
 飲料用自販機も24時間稼働し便利なものですが、自全国で260万台設置されています(全国自販機協会調2001年)。1日で7kwh程度の電力消費量 です。販機メーカーも節電に努めています。

(2)節電の必要

 電力を生み出すためには大きいエネルギーを使っています。それぞれの電気製品の電力消費を意識し、節電の習慣をつけることが大切です。
 例えばエアコンの設定温度を日本の全家庭が1℃上げ下げするだけで、1年間で杉の木1億5千万本以上が吸収するCO2の削減になります(県内世帯が行うと、140万本分以上)。

(3)待機電力と常時接続している電力の無駄さ

エアコンのコンセント1年中つけぱなしにしていませんか?常に4W以上の電力が流れています。
左図のようにコンデンサーがついている器具はプラグを抜かないと常に待機電力がかかります。

 待機電力とは、コンセントをつなぎ放しにしていると流れる電力のことです。
 日本全体の家庭で100万kw級発電所のおよそ4.7基分を使用しています。また、常時接続している機器の電力消費も膨大なものがあります。我が家や学校での待機電力や常時接続の電力の無駄 に気付く必要があります。

携帯電話の充電アダプターを コンセントからはずさないままにしていると?
 本当に必要な充電をしていますか?仮に3日に一度1時間半の充電を行い、普段はアダプターをコンセントからはずさなかったら、下図のような電力消費になります。
  携帯電話は夜間は切って朝の出掛けに充電するだけで充分です。
※出所:家庭の省エネ大辞典(財団法人省エネルギーセンター)

(4)学校のCO2発生量を調べてみましょう

 電気、ガス等の使用量を調べて、二酸化炭素排出係数をかければ、CO2の発生量 がでます。

県ではエコ啓発誌として「エコでいこう」を作成して県民に広く取組を呼びかけています。 https://eco.pref.miyazaki.lg.jp/gakusyu/ecolife/index.html

 

7 エコ・クッキング

 食に関する「買い物」「料理」「食事」「片付け」を通 した一連の行動におけるエネルギー消費に気づき、少しでも環境にダメージを与えないよう私たちにできることを考え、実践していくことも大切です。

(1)旬のもの、近くのものの消費を

 今は、キュウリでもトマトでも一年中お店に並んでいます。
 しかし本来、野菜は実る季節があり、それを旬といいます。旬のものは、最も適した自然のエネルギーを受けて育ち栄養価も高く美味しいのです。

【地産地消】 本県は、豊かな農水産物に恵まれています。県内産と遠くから運ばれてくるものは、必要なエネルギーが大きく違います。また輸入農産物の多くは、船蔵の貯蔵のため農薬(ポストハーベスト)が使われます。従って県内の産物の購入に心がけたいものです。


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