11月8日(木)、県立延岡工業高校土木科の1年生41名を対象に、「土木の日」現場見学会が開催されました。この見学会は11月18日の「土木の日」を前に、将来の土木界を担う高校生に建設現場の技術に直接触れてもらおうというものです。この日は、延岡市新最終処分場、東九州自動車道熊野江第一トンネルなど4箇所を見学し、各現場では、国・県・市の工事担当者と実際に工事をしている技術者の方からの説明がありました。
【延岡市新最終処分場】
延岡市北方町で建設中の延岡市新最終処分場では、主に家庭や事業所から出るごみ(一般廃棄物)を焼却した後の灰や、破砕残さ物を埋め立てる計画となっています。平成25年度末の埋立開始を目指して現在、埋立地の造成工事などを行っています。
造成工事の現場では、山を削って出てきた土を有効利用するため、場内の別な場所で埋め、処分場を形づくっています。その際、粘土質の土はそのまま使うと水分が多過ぎるので、石灰をまぜて水分をとって埋めるようにしているそうです。
現場では浸出水処理施設の整備も進んでいました。一般廃棄物の最終処分場は、埋立物の上から降った雨がそのまま地面にしみこんで地下水や周囲の土壌を汚染しないよう、地面を遮水シートで覆って一箇所に集めるよう設計されています。浸出水処理施設とは、こうして集めた水を環境に影響の無い水質になるよう処理するための施設です。
【五ヶ瀬川水防災事業岡元工区】
次は五ヶ瀬川流域で台風や豪雨による浸水を防ぐため行われている水防災事業の現場を訪れました。ここでは平成12年度から約90億円の事業費をかけ、16の地区で宅地のかさ上げや集落全体を築堤で囲む「輪中堤」という工事が行われています。見学したのは、平成17年台風14号で廃線となった旧高千穂鉄道の岡元駅があったところです。
ここでは、工事を担当する延岡土木事務所の職員から、河川の工事は通常下流側から行われること、かさ上げした土地を安定させるために、工事にあたっては締め固める土の密度に注意する必要があることなどの説明がありました。
ここで見学した生徒さんから、工事のコストを抑えるための工夫について質問。かさ上げに必要な土は、全て購入するとコストが高くなるので、河川に堆積している土砂や他の工事現場で発生した土を持ってきて半分ずつ混ぜて使っているそうです。このため、建設工事を発注する国や県、市町村では連携をとって工事に必要な土を融通できるよう情報交換しています。
【東九州自動車道熊野江第一トンネル建設現場】
続いて東九州自動車道の新直轄事業区間(国と地方の負担で整備する区間)として整備が進む佐伯~北川間で、掘削中の熊野江第一トンネルの建設現場を見学。到着早々、ダイナマイトによる発破のためのカウントダウンが始まりました。トンネルの入口のすぐ外で少し緊張した面持ちで待機。トンネルの入口には分厚い防音扉があり、発破が行われたのは入口から700メートル以上入りこんだ場所でしたが、それでも音と空気の振動は迫力がありました。トンネル工事は昼夜を問わず24時間体制で行われます。山間部とはいえ、周囲の住民の方々の生活、作業員の安全を考えて発破の際は必ず防音扉が閉められるそうです。
このトンネルでは発破で崩れた土や岩を外に出し、壁が崩れてこないように鋼製の支え(支保工)を設置し、コンクリートを吹き付けてロックボルトを打ち込んで補強し、防水シートを設置したのち、コンクリートの壁をつくりきれいに仕上げる「NATM工法」という手法がとられています。外に出された岩石は山のように積み上げられ、ひっきりなしにトラックが運んでいきます。
また、削った山肌から出てくる湧水は写真にあるように防水シートにより集められ、パイプで坑外に出された後、工事期間中は「濁水プラント」という設備で処理されています。
【一般県道須美江インター線】
東九州自動車道の整備にあわせて、新しく設置される須美江インターチェンジと国道388号線を結ぶ県道で、平成19年度から約1.9㎞の区間を整備しています。12月の東九州自動車道の供用開始にあわせて須美江インター線も開通する予定で、工事は最終段階に入っていました。
このインターチェンジは、周辺の須美江地区、熊野江地区から延岡市街地の病院への救急搬送が速やかに行えるようになるなど、地区の生命線としての役割のほか、島野浦漁港で水揚げされた水産物の輸送など、地域を活性化する役割を担っています。
ここでまたまた生徒さんからの質問。道路の線形はどのように決めるんですか?道路の計画を作る段階で、どのルートを通せばコストをかけずにできるかを検討するのだそうです。また、この須美江インター線のように周辺が山や田畑に囲まれた自然豊かな場所では、できるだけ自然を壊さないことも重要な要素となるそうです。
【見学会を振り返って】
今回の見学会で、生徒さん達は、なかなか見ることのできない建設現場を自分の目で見て、工事を担当している方々の話を聞いて大変参考になったようです。「普段何気なく使っている道路やトンネルにこういった土木技術が使われているというのがわかった」「今日の見学で学んだことを将来に活かしていきたい」と各現場の担当者に感謝の気持ちを表していました。
またそれぞれの現場では、発生した不要な土の有効利用、周辺の土壌や水質の保全、騒音や振動の防止など、環境に配慮した対策が取られていることもわかりました。
〈ここでミニ知識~建設リサイクル法〉
多くの建設工事では、コンクリートやアスファルトの塊などの建設副産物が発生します。発生した副産物のうち、再利用すれば原材料として利用の可能性がある4品目(コンクリート、コンクリートおよび鉄からできた建設資材、木材、アスファルト・コンクリート)については、建設リサイクル法でリサイクルの仕組みが作られています。
この法律では、一定規模以上の建築物の解体工事や工作物の工事などについて、建設工事受注者による分別解体及びリサイクル、工事の発注者や元請け業者などの契約手続きなどが規定されています。
もっと詳しく知りたい方は以下のリンクをご覧ください。
(宮崎県庁ホームページ 建設リサイクル)
http://www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/doboku/gijutsu/re-hp/index.htm
(国土交通省 リサイクルのページ)
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/recycle/index.html